学習指導要領の改訂へ向けた議論が開始
2030年度から段階的に実施される次期学習指導要領の改訂に向けた議論が始まっています。
学習指導要領は約10年ごとに改定され、日本の教育の方向性を決定する重要な基準です。
今回の改訂では、2026年度中に答申をおこない、2030年度から小学校から順次実施される予定となっています。
-1-1-pdf-1024x724.jpg)
これからの学びに求められるポイントはどんなものなのでしょうか?
これからの学びに求められていることとは?
文部科学省の資料から次のような内容がポイントとなりそうです。
●「質の高い探求的な学びの実現」として探求学習の強化
●「各教科での学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科横断的な教育」としてのSTEAM教育の推進。
●個別最適化な学習とAI活用の推進
●幼児教育から小学校教育の連携と質の向上
-2-pdf-1024x724.jpg)
「質の高い探求的な学びの実現」として探求学習の強化
質の高い探求的な学びを実現するための「総合的な学習の時間」、「総合的な探求の時間」の改善・充実の在り方をどのように考えるか、その際の情報活用能力の育成との一体的な充実や教科等横断的な学びの充実をどう考えるか、が大きなテーマとなっています。
全国学力・学習状況調査の分析等において、総合的な学習の時間で探求のプロセスを意識した学習活動に取り組んでいる児童・生徒ほど各教科の問題正答率が高い傾向にあること、探求的な学習活動に取り組んでいる児童生徒の割合が増えていることが明らかになっている。また、総合的な学習の時間割合はPISAにおける好成績につながったことのみならず、学習の姿勢の改善に大きく貢献するものとしてOECDをはじめ国際的に高く評価されている。ー
新学習指導要領に新たに位置づけられた「総合的な探求の時間」や「理数探求」はSTEAM教育が狙いとするところと多くの共通点があり、各高等学校において、これらの科目等を中心としてSTEAM教育に取り組むことが期待される。ー
STEAM教育の推進について
文理横断・文理融合の観点からのSTEAM教育の推進
「探求学習の強化」はすなわち「STEAM教育の推進」として捉えることができます。
STEM教育-Science(科学), Technology(科学技術), Engineering(工学), Mathematics(数学)のSTEM分野が複雑に関係する現代社会の問題を、各教科・領域固有の知識や考え方を統合的に働かせて解決する学習体系です。
STEAM教育とはそのSTEM教育にArts(デザイン、感性等)の要素を加えたもので学問領域を横断して指導する枠組みであり、文系・理系の枠を超えた学びと捉えることができます。
今後ますます探求学習が重要視され、日本の教育においてもSTEAM教育が推進されていきそうです。
個別最適化な学習とAI活用の推進
子どもが自分自身で学びを調整し、教材や学習方法を選択できる学習環境デザインの重要性、新たな時代にふさわしい学びや教師の指導性のあり方をどう考えるか、も重要なテーマです。
GIGAスクール構想による1人1台端末やクラウド環境等のデジタル学習基盤は1人ひとりのよさを伸ばし、困難の克服を助ける大きな可能性を持つが、効果的な活用はまだ手探りの状態です。
日本のデジタル競争力は国際比較でも低位であり、デジタル人材育成強化は大きな課題です。
幼児教育から小学校教育の連携と質の向上
「環境を通して行う教育」を基本とした幼児教育と小学校教育との円滑な接続の改善と質の向上についても提起されています。
「環境を通して行う教育」とは、具体的に生活をする中で、子どもが自ら興味や関心をもって環境に関わり、試行錯誤を経て、環境へのふさわしい関わり方を身に付けていくことを意図した教育です。「環境に関わる中で子どもたちに体験してほしいこと」を考慮しながら意図的に環境を構成していく必要があるものです。
「幼児教育から小学校教育の連携と質の向上」が提起されている背景には、幼児教育と小学校教育の差が大きく、多くの子どもたちがその間を移行する際に困難を感じている現状があります。その差をどんなふうに橋渡しをするかがテーマとなっています。
まとめ
全体を通して、国として『文理横断型STEAM教育の推進』 『1人ひとりの興味・関心を尊重した個別最適化な学び』 『主体的・自律的に学ぶ探求学習へのシフト』 『メディアリテラシ―の向上を前提として、ICTや生成AIなどの科学技術の活用』といったテーマがあることがわかりました。
これからの時代に向かって日本の教育が大きく変わろうとしており、今の子どもたちは時代の転換点にいるのかもしれません。ですが、これからどんな時代になろうとも、教育が人の幸せを築く基盤であることは変わることはないはずです。
教育は国の在り方を決める大切なもの。
私たちが住む日本という国がどんな未来を歩もうとしているのか、『学習指導要領』を通して知ることができます。そして、広く国民に意見を募る「パブリックコメント」というプロセスもあって、実は誰でも意見を言える仕組みもあるそうです。学習指導要領の改訂へ向けた議論は国の教育に関して自分なりに考えてみる、未来を考える機会だといえるでしょう。
資料まとめ(文部科学省ホームページから)
初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問のポイント:詳細版)
初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)
初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)概要
初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)参考資料